Vol.26 南魚沼の地の恵みを生かした料理でおもてなしを
ものづくりの背景には、作り手の感性や技術とともに、産地へのこだわりやリスペクトの想いがあります。さまざまな分野で活躍する方々に輝きの秘密をうかがいながら、サザンアフリカのダイヤモンド鉱山で採掘された原石がダイヤモンドジュエリーとなるまでの確かなプロヴェナンス(来歴)とトレーサビリティ(生産履歴)を誇るSABIRTHとの共通項を探ります。
【Vol.26 桑木野恵子さん/里山十帖 料理長】
世界を旅してたどり着いた、雪深い里山
新潟県南魚沼市の大沢。この地で今、世界中から注目を集めている、古民家を改装した宿「里山十帖」でシェフをつとめる桑木野恵子さん。
大学を卒業後、最初の仕事はエステティシャンでした。
「当時は健康よりも美容に興味があり、アロマも好きでしたのでエステティシャンになりました。その後、オーストラリアでアーユルヴェーダの先生と出会い、肌の表面に塗る化粧品よりも、体の内側から綺麗になり、健康であることで人生を楽しみたい、と考えるようになったのです」。
もっと本格的にアーユルヴェーダやヨガを勉強したいと、ネパールからインドに入り2年ほど旅を続けました。
「インドでは現地のお母さんの家にお邪魔してスパイスの使い方を教えてもらったり、リトリート(日常から離れて滞在する宿泊施設)では料理の手伝いをすることもあり、食への興味も深まっていきました」。
帰国後は東京・吉祥寺のヴィーガンレストランの調理スタッフに。
「2年ほど働き、お店を継がないかというお話もいただいたのですが、たまたまここ里山十帖のオープニングスタッフを募集していると聞いて興味がわき、応募してみたのです」。
最初に訪れたのは1月4日の吹雪の日。
「慣れない雪道での運転に始まり、雪の中に閉じ込められるような気持ちになって半泣きでした。でも、冬が長いぶん、草木が芽吹き日に日に緑が広がっていく春の喜びは大きいんです。あれから10年以上になりますが、本当に綺麗で、毎朝感動があります。この土地を好きになったのは自然、そして人との出会いですね」。
目の前で採れる山菜が、季節を教えてくれる
毎日、すぐ近くの山で山菜を採るのが、この季節の桑木野さんのルーティーン。谷の向こうにまだ雪の残る八海山を眺めながら歩き出して1分もしない場所で、まずは自然に生えている三つ葉を見つけ、摘み取りました。
「ここに来た当初は山菜なんてフキノトウくらいしか知らなかったのですが、今ではセリ、三つ葉、ワラビ、イタドリ、ウド、たらの芽……。100種類くらいわかるようになりました。どこに何が生えているかも大体目星はつけていますが、山にあるものをどう活かし料理するか。メニューが広がるのは楽しいですね。昨日はウドを40キロ採ってきて塩漬けにしました」。
里山十帖の厨房には海外からのインターンも含め6名の調理スタッフがいます。彼らを統括しながら、積んできた山菜を手早く処理する桑木野さん。ワラビは灰と熱湯注いだバットに一晩ひたしてアクを抜きます。
「山菜はものによってアクの抜き方や基本の調理法が違い、最初は綺麗な色に茹で上がらなかったり柔らかくなりすぎたりという失敗もありました。でも、温泉の公共浴場で地元のおばあちゃんに一つずつ教えていただいて覚えていきました」。
今日摘んだ山菜は、ウドは火を入れずに生で、ワラビは炊いて、たらの芽は素揚げして出汁に浸け込んで……と、食材ごとに丁寧に調理し、味を引き出し、温泉の地熱で育ったグリーンマンゴーとニンニクのドレッシングを添えてサラダに。小さなスミレとカキドオシの花も一緒に食べることができます。
「山菜は毎年同じ場所に自然に生えてきます。その力強さを感じる味を生かして、お客様に季節や新潟の風土を感じていただきたいと思っています」。最近は海外から桑木野さんの料理を目当てに訪れるゲストも増えているそう。英語で食材やメニューを説明するのも、桑木野さんの役割です。
食材もダイヤモンドも “オリジン”が大切な時代
世界中でも山菜を摘んで食するのは日本ならではの珍しい食文化だといいます。
「昨年、We’re smart green guideの『世界ベストベジタブルレストラン トップ 100』に選出されたのですが、ベルギーで開催された授賞式で天然の食材がこれだけある国はヨーロッパにもないと驚かれました。自分の暮らす周囲1マイルの範囲で取れたもので多彩な料理ができる環境は素晴らしいものなのだと、改めて実感しました。山菜だけでなく地元の方が育てた野菜、アユやカジカなどの川魚、ジビエ、秋にはキノコが採れますし、冬には楓の木からメイプルシロップを集めます。そして忘れてはいけないのが、お米。魚沼産ブランドは有名ですが、中でもここ大沢は昔から美味しいお米ができる“三沢”の一つです」。
桑木野さんが新潟の地の食材にこだわり、その魅力をさまざまな料理で表現するように、サバースもまた、サザンアフリカのダイヤモンド鉱山で採掘された原石が研磨されジュエリーとなり、お客様のもとに届くまでの道のりを大切にしています。
「料理が中心の生活をしているとなかなかジュエリーをつける機会がないのですが、ダイヤモンドって、こんなに気持ちが上がるんですね。料理の業界では産地や生産者を明確にする動きに加え、最近ではオリーブオイルやコーヒー、チョコレートなど、農場や生産者、品種や精製方法などの単位で一銘柄とするシングルオリジンがムーブメントになっていますが、ダイヤモンドも産出国や鉱山がわかるのは大事なことだと思いました。食べ物の素材や人との出会いも“縁”ですが、ジュエリーを購入するのも“縁”だと思うので、いつか何かの記念に素敵なものを手に入れたいと思います」。
10代から世界を旅した後、ここ南魚沼の厨房で10年の歳月を過ごしてきた桑木野さん。今後のビジョンは?
「生まれ育ったわけでもない、たまたま来た場所で、こんなにも素晴らしい食材や食文化に出会うことができたのも“縁”だと思っています。ローカリティは深めれば深めるほど発信できる内容も濃くなりますから、ここでもう少し根を生やして、土地の魅力を伝えていくことができたら。同時に、世界で同じように地元の食材や食文化と向き合っている人々と交流してみたいと考えています」。
誕生を意味し、古代エジプトでは再生や永遠を願う守護的なモチーフであった「BIRTH」のペンダントとピアスを主役に、リングにも煌めきを添えて。
(左から)
ピアス / BIRTH 〈Pt×ダイヤモンド〉¥572,000
ペンダント/ BIRTH 〈Pt×ダイヤモンド〉¥770,000
リング/ GOOD HOPE〈Pt×ダイヤモンド〉¥1,980,000
リング/ORANGE REIVER〈Pt×ダイヤモンド〉¥1,100,000
リング/ETERNTY〈Pt×ダイヤモンド〉¥399,300
桑木野恵子/ KEIKO KUWAKINO
埼玉県出身。大学卒業後エステティシャンとなる。アロマテラピーを学ぶためにオーストラリアへ渡り、アーユルヴェーダを学ぶ。ネパールやインドを歴訪し、スパイスの知識を深める。帰国後、吉祥寺のヴィーガンレストランで料理長を務める。2014年の開業から里山十帖の料理人となり、2018年4月から里山十帖の料理長を務める。