Vol.30 産地は、地球。鉱物からつくるオーガニックな化粧品
ものづくりの背景には、作り手の感性や技術とともに、産地へのこだわりやリスペクトの想いがあります。さまざまな分野で活躍する方々に輝きの秘密をうかがいながら、サザンアフリカのダイヤモンド鉱山で採掘された原石がダイヤモンドジュエリーとなるまでの確かなプロヴェナンス(来歴)とトレーサビリティ(生産履歴)を誇るSABIRTHとの共通項を探ります。
【Vol.30 北島寿さん/MiMC開発者兼代表取締役】
肌への悩みを解決してくれた“自然の力”
幼い頃からリケジョ(理系女子)の資質をもっていたという北島寿さん。
「なぜ人は生まれ、死ぬのだろう。なぜミミズは片方の向きにだけ進むのだろう……浮かんだ疑問を解明したくてのめり込む性分は、今も変わっていません」。
東北大学の大学院ではMITと共同で生体反応解析の分野を研究。サイエンティストへの道を進んでいましたが、重篤なアトピー、アレルギーに悩まされるように。
「研究室で有機化合物や有機溶剤に触れていたからか、化学物質過敏症になってしまいました。湿疹が広がりメイクもできずお風呂にも入れない状態で。メディカルの分野とも関連のある研究室にいましたので、すぐに薬でよくなるかと思っていたのに、なかなか治らない。そんな時に漢方の葉を煮出してお風呂に入れたら、肌の火照りや痒みが引いたのです」。
“自然の力”に感銘を受けた北島さんは生体についての研究から、自分を治すことのできる化粧品の分野へとスイッチ。化粧品会社の開発と処方研究に活動の場を移しました。
「そんなある日、たまたまアメリカ政府がグリーンカード(永住権)の抽選を行うという記事を目にして応募してみたら当たってしまったんです。アメリカはオーガニック化粧品の先進国。宝くじに当たるよりも難しいと言われるグリーンカードを手にしたのだから、このチャンスは生かさなければ、と、渡米しました」。
アメリカで会社を立ち上げ、オーガニック化粧品を処方してもらえそうな研究所を巡る日々。
「私が思う赤とアメリカの人が思う赤が違ったり、アジア人の肌の色を理解してもらえなかったり、苦労もありましたが、現地の方に“ブランドを作りたいの? メーカーを作りたいの?”と聞かれたことは、その後のMiMCの方向性を決める大きな指針になりました。メーカーは新しい技術でモノを創造するけれど、技術が古くなると何も残せない。ブランドにはフィロソフィーがあり、今も100年後の未来も変わることなく存在できる。日本ではなかなかブランドが育たないと言われていましたが、自分の悩みから生まれた“自然の素材でずっと人を美しくしていきたい”という私の思いを、ブレることなく続けて行こうと思いました」。
世界中を旅して探す、より良い石や植物
2007年2月に起業し、その年の5月に最初に手掛けたのは紫外線から肌を守るミネラルパウダーサンスクリーン。簡単に化粧直しができ、崩れにくく石鹸でオフできる自然由来の製品は、多くの女性の心を掴みます。そして続く9月に発表されたのが、50色のミネラルカラーパウダーでした。
「MiMCの製品はすべて自然の素材でつくられていますが、カラーパウダーも鉱物を砕いただけの自然な色を生かしています。グリーンはモロッコ産のマラカイト、ブルーはアメリカのアリゾナ産のアズライト、ブラックはイギリス産のヘマタイト……。より美しく発色する鉱物を探して、自分でリュックサックを背負って鉱山まで出かけることも少なくありません。研究者気質なのでこの地層ならこの国のこのあたりに良い鉱脈があるはず、と、国をまたがる山脈を調べることもありますね」。
鉱物だけではなく、シルクや植物など、世界中の産地からより良い素材を探し、比較し、実験が繰り返されます。
「たとえばローズ水のスキンミストはブルガリアのごく限られた地域の指定農場でオーガニック栽培するダマスクローズを使っています。香りを守るために6月の陽が昇る前に摘み取って加工し、秋に日本に届くのですが、去年のものと今年のものでは香りが全然違います。工業製品は昨日も今日も明日も同じ規格であることが求められますが、自然素材のものは、二度と同じものには出会えない。無理に同じ香りに揃えるのではなく、自然がつくる化粧品の毎年異なることの魅力をお伝えしていけたらと思っています」。
鉱物の王様ダイヤモンドへの科学的視点からの憧れ
北島さんがオーガニックな化粧品の原料となる素材を求めて世界中を旅するように、サバースもまた、世界中のダイヤモンドの産地を検証し、美しさや携わる人、環境への配慮から南アフリカ共和国、ボツワナ共和国、レソト王国というサザンアフリカの地にたどり着きました。鉱山から多くのプロフェッショナルの手を経てお客様のもとに届くまでの道のりも明確にしています。
「ジュエリーと化粧品ではジャンルは違いますが、どんな産地からどういう人が関わって製品になるかを見極めることの大切さは同じですね」。
ダイヤモンドには、宝石としての魅力以前に鉱物、そして結晶としての魅力を感じるというのも科学者ならではの視点です。
「地球上のあらゆる物質の中で最も硬くて強いダイヤモンドは、モノを切断する素材としても使われます。大学院時代、顕微鏡で観察するためのスライドガラスをカットするのにダイヤモンドのカッターが使われていて、その鋭く美しい切れ味に、いつも惚れ惚れしていました。そもそも単一の元素で構成された結晶であることも奇跡的ですよね。地球のかけらとも言える鉱物がこんなにも強く、美しいことに感動します」。
もちろんジュエリーとしての魅力も充分に感じているそう。
「宝石にはエネルギーがあると思います。プレス発表会などで多くの方の前に立たなければいけない時などに、ダイヤモンドのジュエリーにはパワーをもらっています」。
化粧品もジュエリーも、人を美しく輝かせるために欠かせないアイテム。
「何を選びどう使うかがその人のアイデンティティをも表現しますし、見た目の美しさだけでなく、つけることでパワーやオーラ、エネルギーをくれる存在だと思います。」。
確かな産地の地球生まれの自然素材が与えてくれる美の可能性を追求して、北島寿さんはこれからも世界を旅することでしょう。
南アフリカの灯台をインスピレーション源に生まれたリングは、センターのファンシービビットイエローダイヤモンドが希望の灯のように強い光を放ちます。ダイヤモンドのジュエリーと華やかなコーディネートを。
(左上から時計回りに)
イヤリング/GOOD HOPE〈Pt×ダイヤモンド〉¥891,000
リング/GOOD HOPE〈Pt×ダイヤモンド×ファンシーヴィヴィッドイエロー ダイヤモンド〉¥2,970,000
ペンダント/GOOD HOPE〈Pt×ダイヤモンド〉¥1,540,000
ブレスレット/ORANGE RIVER〈Pt×ダイヤモンド〉¥3,630,000
ブレスレット/ORANGE RIVER〈Pt×ダイヤモンド〉¥913,000
北島 寿/ KOTOBUKI KITAJIMA
東北大学大学院理学研究科博士課程前期終了。日本の自然派化粧品会社に勤めた後、2001年にアメリカ西海岸に渡りオーガニック化粧品や先進的美容治療のマーケティングを学ぶ。2007年に「MiMC」を設立。現在は13店舗の直営店をはじめ全国のセレクトショップで取り扱いのある人気ブランドに。著書に「クレンジングをやめたら肌がきれいになった」(文藝春秋刊)
https://www.mimc.co.jp/shop/default.aspx