Vol.2 人生は“食べる旅”。豊かな食材と食べる人とを繋げたい
ものづくりの背景には、作り手の感性や技術とともに、産地へのこだわりやリスペクトの想いがあります。さまざまな分野で活躍する方々に輝きの秘密を伺いながら、サザンアフリカのダイヤモンド鉱山で採掘された原石がダイヤモンドジュエリーとなるまでの確かなプロヴェナンス(来歴)とトレーサビリティ(生産履歴)を誇るSABIRTHとの共通項を探ります。
【Vol.2 野村友里さん/ eatrip主宰・料理人】
食べる場であると同時に発信の拠点となる店を
東京・原宿の目抜き通りから少し入った住宅街に佇むレストラン「eatrip」。小さな看板に誘われて草木の茂る路地を進んだ先にある一軒家は、ファッションの街の喧騒を忘れさせてくれる、どこか懐かしい落ち着いた雰囲気の空間です。
「母がおもてなし教室を開いていましたので、幼い頃からずっと料理は身近な存在でした。絵や音楽も好きでしたが、高校〜大学生の頃から大人に混じって教室で学ぶうち自然に、この道を選んでいました」と語る野村友里さん。20代のはじめにイギリスに料理留学し、そのキャリアをスタートさせました。
「当時のロンドンはテレンス・コンラン氏が次々と新しいレストランをオープンさせていた時代。フィニシングスクールで料理の基礎を学ぶ傍らで、そんなトレンドに触れたり、フランスまで出かけて美味しいクロワッサンに感激したり、たくさんの学びと刺激がありました」。
厨房に立つ料理人の姿に、感銘を受けたことも。
「プロの料理人としての仕事は一生をかけてやるものだと思うようになりました。そのためにも好きなものを持ち続けていた方がモチベーションになるはず、と、方向性を模索する日々でした」。
帰国後、インテリアショップが立ち上げたレストランで料理人としての道を歩み始めた野村さん。たくさんの人の縁に恵まれ、ケータリングやイベントの企画・プロデュースなど、食に関するさまざまな分野に仕事の範囲を広げていきます。2009年には俳優、歌手、料理人、生産者、住職など多様な人が“食“そして“生“について語るドキュメンタリー映画「eatrip」を製作し、話題を呼びました。そして映画と同名のレストラン「eatrip」をオープンしたのは、2012年のこと。
「きっかけは、東日本大震災で都会の食の環境の脆さを思い知ったこと。それまでは国内外のさまざまな生産地に出かけ、農産物の生産者と知り合うことができても、実際に生産物を“食べる人”に届けることはできていませんでした。レストランで食べていただけば「美味しい! これ、どこの?」と、興味を持っていただくきっかけとなり、生産者とお客様をつなぐことができるはず。自分の舌で良いと思ったものが自然と伝わるよう、料理だけでなく環境も含めた空間を、というのがお店づくりの原動力となりました。
つくり手の生き方と思いが美味しさを育む
東京は、世界一のグルメタウン。さまざまなレストランがひしめき合い、あらゆるジャンルの料理を食べることが可能です。
「選択肢が多いのは素晴らしいことですが、逆に“選択疲れ”してしまうこともあるのではないでしょうか。難しく考えず、食べて美味しい、それが一番だと思っていますが、一方で食べるという行為は、食材を自分のからだの内部にまで入れることです。信頼できる生産者の安心できる食材を知ってほしいと思っています」
そんな野村さんは全国の生産地を巡り、生産者とのネットワークを築き、料理人やその先にいる食べる人と繋げてきました。
「選ぶポイントは “人”。生産に携わるその人自身の考えや気持ちに共鳴できるかどうかが大きいですね。美味しい理由を数字で具現化することはできないので、毎回実際に会って、お話を聞いて、食べてみて……という繰り返しです。嬉しいことに一人の“野菜も美味しいけれど生き方も素敵! ”という方に出会えると、そのご縁で次の生産者さんとどんどん繋がっていくんです。どんなにこだわりが強くても、人は自分が食べる全ての作物を自身で作ることができるわけではありません。生産者さんは“かわりに育ててくれる人”。お金があっても買うことができない思いや時間や手間が詰まったものを“譲って”もらい、お客様に“この人がつくっているから美味しいですよ”と自信を持って提供することから小さな輪を広げていきたいと思っています」。
野菜、果物、肉、魚……さまざまな生産者と向き合い、その生産物を食材としてレストランで提供する中では驚きや感動を体験することも。
「北海道で野生の鹿をいただいた時には、食用に育てられた生き物とは比べものにならない強いエネルギーを感じました。野菜にしてもその土地を愛し、種を大事にし、土作りに情熱を注ぎ、作物と寄り添って暮らす方が手がけた生産物は、腐らないことが多いのです。キャベツを半分切って置いておくと、どんどん芽が出て花が咲く。レモンだって農薬を使わなくてもなかなかカビません。科学的に解明できることではないのかもしれませんが、美味しくなるように何代にもわたって育て続けた強いDNAのなせる技なのでしょうか。同じ食べるのであればそんな作物のエネルギーをからだに取り入れたいですし、自分が死ぬ時に、そんな野菜たちのような枯れ方ができたらいいなと思うこともありますね」
大地が生み出すダイヤモンドに感じるロマン
そんな野村友里さんが今、気になっているのは「種」。
「長崎の雲仙での種取り農家さんとの出会いからは多くの学ぶことがありました。現在市場に出回っている野菜のほとんどは“F1(First Filial Generation)”と呼ばれる人工交配の種で、規格の揃った均一な作物にはなりますが、その種から育つ野菜には雄しべがなく、一代限り。自分のからだに入れるものであれば、できれば多少形がいびつであっても、種が育って実になって、そこから次の種を採るという自然な循環から生まれた自然なものを食べたいとは思いませんか? 法律や流通の難しい壁があり、誰もが自由に在来種や自然農法の種を手に入れることはできないのですが、野菜や果物だけではなく、その源にある種にも少しでも多くの方の意識が向くようになればと思っています」。
食の安心・安全を求める風潮の中で、最近ではスーパーマーケットなどでも誰がつくった食材であるかを表示して販売するスタイルが見受けられるようになりました。
「2006年にアメリカで食品トレーサビリティが法制化され、日本でもようやく、誰がどこの産地で作った生産物かが意識されるようになってきました。たとえちょっと値段が高くても、来歴が確かで安心できる美味しいものは食べた時の満たされ感が違います。トレーサビリティが確かな食材を買いたい、食べたいと思う方が増えることを願っています」
SA BIRTHのダイヤモンドもまた、鉱山での原石の採掘から研磨、ジュエリーに仕立てられてお客様のもとに届くまでのプロヴェナンス(来歴)とトレーサビリティ(生産履歴)が明確であることを大切にしています。
「仕事柄“土づくり”にロマンを感じるのですが、人も動物も植物も、最後は土に還っていくわけで、土の中にはその何万年分もの生命が溶け込んでいるのだと思います。地球が誕生した頃に地底の奥深くで生み出されたダイヤモンドにも、同じようなロマンや大地のエネルギーを感じますね。今、このダイヤモンドを身につけているのは私だとしても、それは大地からの預かりもの。娘や姪など次の世代に譲ったり、ヴィンテージとして市場に出回って次の持ち主と出会ったりして、その輝きはずっと生き続けていくのだと思います。誰かに受け継ぎ、贈りたくなるようなダイヤモンドジュエリーに出会えたらいいですね」
そんな野村さんが目指す食の世界は?
「今はレストランと食材店を活動のベースにしていますが、シェフやスタッフとのチームで動いていると、それぞれの生い立ちの中で重ねてきた食の体験やバックグラウンドがあり、世代も違うので面白いですね。みんなの視点を取り入れながら、海外も含め全国各地で活動する、環境に寄り添いながら誠実にものづくりに向き合う生産者さんとお客様を繋ぎ、メッセージを伝えていきたい。豊かで安心なものをみんなで食べられる社会にしていきたいと思います」
食の分野で多くの原石を発掘し、輝かせていく野村友里さんの活動は、未来へと続いていきます。
畑で育てたハーブを使ったドリンクもおもてなしのひとつという野村友里さん。本日選んだピアスとペンダントは、どちらもダイヤモンドという素材の美しさを最大限に際立たせたシンプルなデザイン。デイリーな食のシーンでも楽しめる定番ジュエリーです。
ピアス/VICTORIA FALLS〈Pt×ダイヤモンド〉¥913,000
ネックレス/GOOD HOPE〈Pt×ダイヤモンド〉¥¥319,000(価格は全て税込)
【PROFILE】
野村友里 / YURI NOMURA
おもてなし教室を開いてきた母の影響で料理の道へ。ケータリングの演出、イベントの企画・プロデュースなどの傍ら、雑誌の連載、ラジオのパーソナリティなどの分野で活躍。2009年にドキュメンタリー映画『eatrip』を監督。著書に『Tokyo Eatrip』(講談社)など。2012年に「restaurant eatrip」(原宿)を、2019年にはグローサリーショップ「eatrip soil」(表参道)をオープン。