Vol.9 奈良のハーブ『大和当帰』で素肌に輝きを
ものづくりの背景には、作り手の感性や技術とともに、産地へのこだわりやリスペクトの想いがあります。さまざまな分野で活躍する方々に輝きの秘密を伺いながら、サザンアフリカのダイヤモンド鉱山で採掘された原石がダイヤモンドジュエリーとなるまでの確かなプロヴェナンス(来歴)とトレーサビリティ(生産履歴)を誇るSABIRTHとの共通項を探ります。
【Vol.9 松井里加さん/メイクアップアーティスト】
ファッションの現場に憧れてメイクの世界へ
モード誌上でトップモデルの意思の強い瞳や、ほんのりと上気した頬を見事に創りあげ、高い評価を得ているメイクアップアーティストの松井里加さん。奈良で過ごした少女時代に毎週楽しみに見ていたのが、テレビ番組『ファッション通信』でした。
「ファッションジャーナリストの大内順子さんがパリやミラノ、ニューヨークの最新コレクションとそのバックステージを紹介する番組です。ファッションショーに憧れて、いつか私も海外のコレクションの現場に参加したい、という夢を抱きました」
高校を卒業後、上京して文化服装学院のスタイリスト科に入学。沢山の課題の服作りにも奮闘していましたが、メイクにもとても興味があったので、夜間で当時大人気だったメイクアップアーティストの渡辺サブロウさんが主宰するメイクスクールに通うようになりました」
卒業後は渡辺サブロウさんのヘアサロン『SASHU』に就職。お客様のメイクをしたり、ヘアカタログの撮影などに参加しながら5年半、キャリアを積みました。
「充実した毎日でしたが、このままではニューヨークやパリのコレクションの現場に参加したいという夢には辿りつけないかもしれない、と思うようになり、2000年にニューヨークに渡りました。」。
ヘアサロンでメイクの仕事をしていたとはいえ、まだまだ経験不足。英語もほとんど話せず、語学学校に通いながらアルバイトとテスト撮影をくり返していました。そんな中で最初にアシスタントについたのが“僕のもとにいたら、その先誰のアシスタントもできるようになる”と言われた吉川康雄さんだったのはラッキーだった、と松井さんは語ります。プロの仕事に間近で触れ、アドバイスも受け、少しずつネットワークが広がる中で、4年目にはトップアーティストのチームに参加してパリに渡り、コレクションの現場を初体験しました。
「とにかく壮絶でしたね(笑)。時間に追われながら一日にいくつもの会場を回り、夜には次の日のショーのテスト。ほとんど眠れず、人生で一番テンパりました。でも、ずっと憧れていたコレクションの現場での経験は、得難い財産になっています」。
その頃には念願の就労ビザも取得でき、アシスタントだけでなく自分の仕事も来るように。しかしニューヨークの街でファッションという競争社会に身を置く日々は緊張の連続でもありました。
「体力的にも精神的にもハードで、これ以上ここにいたら体を壊してしまうかもしれないと思いはじめた頃、今は日本にもいいフォトグラファーが沢山いてハイファッションの撮影も面白いことになっている、と聞いたのです。とりあえず一時帰国して見てニューヨークでの仕事をまとめたブック(作品集)を見てもらおうと事務所を回るうち、日本でしっかりと腰を据えてやっていくのが良いのではないかと思うようになりました」
故郷、奈良の農園での『大和当帰』との出会い
6年半活動したニューヨークから日本へ拠点を移し、モード誌のファッションページやビューティーページで活躍するうちに、松井里加さんのもとに大手の化粧品メーカーから開発アドバイスの話が舞い込みます。
「商品開発のノウハウを7〜8年かけて勉強させていただくうちに、自分自身のブランドを創ってみたいという気持ちが芽生えました」
メイクアップで輝くには、まず素肌の健やかさが大切。数々のメイクアップを手掛けてきた松井さんですが、自身のブランドで追求したのは、なんとスキンケアでした。
「これまで色々な方にメイクをしてきて“素肌の状態が良かったらもっとその人自身の美しさを引き出すことが出来るのに”と思うことがよくあリました。発生学によると脳と肌は同時に創られたそうで、肌がしっとり潤っていると脳がゴキゲンになる。素肌の状態に自信を持つことでその人の内面に潜む輝きまで引き出し、ハッピーにしたい、というのがブランドづくりの発端です」。
どんな素材でどんな効能を目指すのか、模索する中で松井さんがたどり着いたのが、故郷である奈良で栽培されてきた “日本のハーブ”です。
「奈良の宇陀市は推古天皇の時代から薬草の産地として大切にされてきた場所でした。そして調べていくうちに出会ったのが『大和当帰』です。まずは現物を見てみたいとコンタクトをとった方が、偶然にも有機農園を経営し日本でオーガニック栽培の先駆けをされていた方だったという幸運に恵まれたのです。お土産にいただいた『大和当帰』の葉をお風呂に入れて入浴したら、肌がしっとりとスベスベになって潤いが続いて。そういえば生産者の方々の手も綺麗だった、と思い出し、このハーブしかない!と猛烈アタックをして契約させていただくことができました」。
この日、メイクルームの片隅に飾られていた『大和当帰』の葉からは、気持ちまで癒される爽やかな香りが漂っていました。
「婦人科系の漢方薬として根っこが有名ですが、葉っぱにも同様の効能があることは最近認められたばかり。成分を抽出してスキンケアに使うしかないと思いました」。
こうして生まれたブランド、『セラリー(SELALY)』では、奈良で無農薬栽培された『大和当帰』をはじめ、柿の葉、よもぎ、甘茶など日本古来から伝承されてきたハーブを使用しています。
「昔の人はちょっと体の不調を感じたらよもぎを食べるなど、草木の効能を生活に自然に取り入れていたのですよね。そういえば私自身も出身地の奈良で、幼い頃から柿の葉寿司や葛などと身近に育ちました。微力ではありますが今後は豊かな日本のハーブの産地である奈良の応援にも取り組んでいきたいと思っています」
ジュエリーにもビューティにも通じる“洗練”の秘密
「40代半ばを過ぎた頃からでしょうか、服よりもジュエリーに興味が出て来るようになりました」と語る松井里加さん。
「いつも何か必ず一つは身につけていて、ジュエリーなしで出かけるのは裸で歩いているような気持ちになります。サバースのダイヤモンドジュエリーの印象は、とても洗練されているということ。私自身も洗練されたメイクを目指しているのでインスパイアされます。洗練ってパッと手に入るものではないと常々思っていたのですが、サバースのトレーサビリティのストーリーに触れて、洗練とは産地からつくりに至るまでのこだわりの積み重ねからが生まれるものなのかもしれないと気付かされました」
手入れの行き届いた健やかな素肌にはメイクアップも映えますが、ダイヤモンドジュエリーもまた、より美しく際立ちます。
「大好きなジュエリーを一つつけているだけで気持ちが上がり、パワーをもらえますよね。それはメイクアップも一緒です。ニューヨークにいた頃から老人ホームの入居者の方にメイクして写真を撮ってプレゼントするというボランティア活動をしていて、コロナになるまでは東日本大震災の被災地でも年2回行っていました。リップ一つでその人の表情がパッと明るくなったり、綺麗になったお母さんに子どもたちが嬉しそうにしている姿に触れると、こちらまで幸せな気持ちになります。また、プライベートでメイクアップのワークショップにも取り組んでいます。高校生の頃にテレビで見ていたニューヨークやパリ、ミラノのコレクションは今も欠かさずチェックしていますが、そこから最先端のエッセンスを自分の技術に取り入れ、アップデートして皆さんに紹介していくことに、やりがいを感じます。モードの世界だけでなくリアルな日常の中で“綺麗”を体感していただくためにできることは、まだまだあるかもしれませんね」。
その人の個性を生かし、更なる美しさを引き出して輝かせる魔法。松井里加さんの活躍は未来へと続きます。
南アフリカのコミュニティから誕生したといわれる花を象った編み物のモチーフを、ダイヤモンドの煌めきで表現。素肌の上で上品に咲き、輝きます。
ペンダント /AFRICAN FLOWER〈Pt×ダイヤモンド〉¥935,000
リング/AFRICAN FLOWER〈Pt×ダイヤモンド〉¥1,430,000
【PROFILE】
松井里加/RIKA MATSUI
奈良県生まれ。東京文化服装学院卒業後、「SASHU」ヘアサロンを経て2000年に渡米。ニューヨークを拠点に活動する傍ら、ミラノ&パリコレクションにも参加。2006年に帰国後、フリーランスのメイクアップアーティストとしてファッション誌や広告で活躍。2022年、ビューティブランド「セラリー」を発表。
https://selaly.jp
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