Vol.13 フルーツから生まれる“宝石のような”コンフィチュール
ものづくりの背景には、作り手の感性や技術とともに、産地へのこだわりやリスペクトの想いがあります。さまざまな分野で活躍する方々に輝きの秘密をうかがいながら、サザンアフリカのダイヤモンド鉱山で採掘された原石がダイヤモンドジュエリーとなるまでの確かなプロヴェナンス(来歴)とトレーサビリティ(生産履歴)を誇るSABIRTHとの共通項を探ります。
【Vol.13 違 克美さん/旅するコンフィチュール 主宰】
絵本に登場するお菓子や料理に憧れて
港町、横浜。海にほど近い築50年のクラシックなビル。違 克美さんが主催する「旅するコンフィチュール」のキッチンは、そのワンフロアにあります。
「幼い頃から料理やお菓子づくりが好きで、外国を舞台にした絵本や料理の本を繰り返し眺めては、そこに登場するまだ食べたことのないお菓子や料理に憧れていました」。
お菓子やジャムをつくる楽しさを再認識したのは、家族の仕事の都合でアメリカに住んでいた頃。「誰かの家に料理を持ち寄って頻繁にホームパーティが開かれていたのですが、私はいつもデザート担当。日本にはない、いろいろな食材を試すのも楽しかったですね」。
もう少し本格的に製菓の勉強をしたいと、日本に帰国後、ル・コルドンブルーへ。とはいえプロになるつもりはなく、あくまで趣味の延長だったと違さんは語ります。その後、当時のパートナーの次の赴任地がベルギーだったため、美味しいフランス菓子やコンフィチュールを求めてヨーロッパを旅する機会に恵まれます。パリではキッチン付きのアパルトマンを借りて、現地で調達した食材でコンフィチュールをつくることもありました。そんな違さん生活スタイルが変わったのは、離婚してシングルマザーになった時。
「まだ幼かった娘との新しい生活が始まりました。週3日リフォーム会社につとめる傍ら、残りの日に何をしようかと考えている時に、たまたま公共施設の中にできる新しいカフェを立ち上げる仕事に就くことが出来たのです。調理や接客からメニューの企画、店舗の運営マネジメント、スタッフの育成までトータルに携わり、とても良い経験になりました。そんな中で、この先もずっと仕事をしていくなら食に特化したいと思うようになったのです」
日本のフルーツの繊細な味と食感をいかして
コンフィチュールの店を立ち上げたきっかけは、たまたま声をかけられたイベントでつくったジャムを売ってみたら好評だったこと。かつて美味しいものを探してフランス全土を旅した経験から、店の名は「旅するコンフィチュール」と決めました。季節のフルーツを中心に何種類ものコンフィチュールを展開するなかで、違さんが心を配っているのが、素材の味をいかすことです。
「アメリカやヨーロッパでもさまざまなフルーツに触れてきましたが、日本の果物は“水菓子”と呼ばれるように生で食べて美味しい、みずみずしいもの。火を通すとその味は、フワッと消えてしまうこともあります。そんな繊細な美味しさや食感や美しい色をいかすため、日々、試行錯誤しています」。
スタート当時は、カフェの立ち上げで培った人脈で地元・神奈川県産の食材を使用することが多かったそう。「横浜では都市型の農業が行われていて一つの農家さんが多品種をつくっているので、色々なフルーツをお願いすることができました。最近はコンフィチュールの生産量の増加とともに素材も量が必要になってきたので、桃なら山梨、リンゴは長野、グレープフルーツは鹿児島、ネーブルオレンジやブラッドオレンジは愛媛と、それぞれの産地から取り寄せています。日本は東西に長いので、季節の移り変わりとともに中国地方から関東、そして東北と、同じフルーツでも収穫時に合わせて産地を変えることもあります。一人のつくり手の方と繋がると、この地方にはこんな農家があるよ、とご紹介いただき、ご縁が広がっていくのがありがたいですね。コロナ禍になる前はなるべく現地に足を運び、直接つくり手の方にお会いするようにしていました。農家さんに私のつくったコンフィチュールを食べていただいて、手間と愛情をかけて育てたフルーツがこんな形でいかされることを喜んでいただけるのも嬉しいことです」。
ジュエリーとコンフィチュールの共通項は、“ときめき”
“すだちと日本酒”“金柑とジャスミンティー” “いちごとバルサミコ酢”など、 「旅するコンフィチュール」には思いがけない味や香りの組み合わせで人気を集めているものが多数。
「素材の組み合わせは、いつも頭の中で。このフルーツは香りが薄いから引き立てるためにアルコールを足そうかな、などと、つくりながら味のイメージのゴールに近づけていきます。ショップの棚に必ず赤、黄色、オレンジ緑は並べておきたいので、色をテーマに季節のフルーツを探すこともありますね」。
選び抜かれたそれぞれの産地のフルーツが違さんのクリエーションによって魅力あふれるコンフィチュールになるように、サバースのジュエリーも、品質の高いサザンアフリカ産のダイヤモンドがあってこそ美しい輝きを放ちます。鉱山での原石の採掘から研磨、ジュエリーに仕立てられてお客様のもとに届くまでのプロヴェナンス(来歴)とトレーサビリティ(生産履歴)が明確であることも、大切なこだわりです。
「フルーツをはじめ食材も同じですが、どこで誰が手掛けたかを知るのは大切なこと。身元の確かなダイヤモンドをつけると、綺麗なエネルギーをもらえる気がします」。
違さんの手掛けるコンフィチュールは、その美しい彩りやみずみずしさから“宝石みたい”“ジュエリーみたい”と言われることも。
「宝石の輝きや色彩にワクワクするような気持ちをコンフィチュールにも持っていただけたら嬉しいですね。でも実は私は、個人的にはカラーストーンよりもダイヤモンドが好き。4月が誕生石の娘が20歳になった時にもダイヤモンドのジュエリーを贈ったのですが、すごく喜んでくれて。世代も時代も超えて受け継がれていくのも、ダイヤモンドのジュエリーの素敵なところだと思います」。
ブランドを立ち上げて、今年で10年。この先はどんなビジョンを描いているのでしょうか。
「規格に合わなかったり熟して賞味期限が迫っているフルーツを農家さんの側で一次加工して冷凍していただくことで、フードロスをなくし安定して素材を調達できる仕組みがつくれたら良いなと考えています。色々な産地から私のもとにやってきたフルーツがコンフィチュールになってお客様の元に届き、そこからさらにギフトとして誰かに贈られる……と、笑顔のリレーが続いたら良いですね」。
「ピアスホールは5個もあいているのですがイヤカフをつけたのは初めて。顔まわりが華やかになって良いですね」と違さん。ダイヤモンドの白い輝きはペンダント、リングとアイテムを重ねても上品な印象を与えます。
ペンダント/GOOD HOPE〈Pt×ダイヤモンド〉¥693,000
イヤカフ/GOOD HOPE〈Pt×ダイヤモンド〉¥660,000
リング/GOOD HOPE〈Pt×ダイヤモンド〉¥616,000
【PROFILE】
違 克美/KATSUMI CHIGAI
2003年、ル・コルドンブルーにて製菓ディプロム取得。5年半のアメリカ生活、数度にわたるパリ、ベルギー滞在時に食に関する知識と経験を深める。パティスリーやショコラショップ勤務をへて2010年にカフェの立ち上げに関わる。2013年「旅するコンフィチュール」をスタート。横浜の地産地消に取り組む「濱の料理人」のメンバーでもある。