TOP SA MAGAZINE Vol.20 フルーツ農家のエピソードを添えて届けるデザート
SA MAGAZINE

Mine to Mine®
〜鉱山から私のもとに届くまで〜

Vol.20 フルーツ農家のエピソードを添えて届けるデザート

ものづくりの背景には、作り手の感性や技術とともに、産地へのこだわりやリスペクトの想いがあります。さまざまな分野で活躍する方々に輝きの秘密をうかがいながら、サザンアフリカのダイヤモンド鉱山で採掘された原石がダイヤモンドジュエリーとなるまでの確かなプロヴェナンス(来歴)とトレーサビリティ(生産履歴)を誇るSABIRTHとの共通項を探ります。

 

【Vol.20 宮田真代さん/パティシエ「Patissiere MAYO」オーナー


どこにもない新しいスタイルのデザートの店を目指して

東京・六本木の目抜き通りから一本入った小路。ビルの3階にある「Pâtissière MAYO」の扉を開くと、その奥にはスタイリッシュな漆黒の空間が広がっています。カウンター形式の店内で、ゲストの目の前でデゼールのコースを作り上げ、提供していくのがシェフパティシエの宮田真代さんです。

「パティシエを目指す方は多くが“小さい頃からお菓子づくりが大好きで……”といいますが、私は全然そんなことはなかったのです。高校生の時に学校で、職業適性を診断するテストを受けたら1位がたまたまパティシエで。本当は美容師になりたいと思っていたのですが、好きなことを仕事にするよりも向いている道に進む方が良いかと思い、製菓学校に進学しました」。
現在の人気と活躍から遡ると、適性診断の結果に従ったことがサクセスへの道を開いたことになります。

「レストランでパティシエをつとめた経験から、食事のコースの最後に出てくるデザートを意識しました。お寿司屋さんや焼肉屋さんなどデザートの出ないお店で食事をされた後の2軒目の利用として、デザートとお酒を楽しんでいただけるお店を目指し、一人で切り盛りしてもキャパシティオーバーにならないよう予約制にしました。コロナ禍の2020年2月のオープンだったのでお客様にいらしていただけるか不安もありましたが、ありがたいことに初日から予約が埋まり、今はほとんどのお客様がリピーターの方です」。

トークの合間にも生クリームを泡立て、スポンジケーキを回転させながら手際良く塗り重ねていきます。
「普段の営業時もお客様とカウンター越しに会話をしながら作業しています。最近は常連のお客様同士が意気投合して、この店から人の輪が広がっていくのも嬉しいですね」。

佐賀の農家のおじいちゃんとの会話をケーキに添えて

月に1度のペースでカラーを変えているという宮田さんの髪。この日は深いレッドが印象的でした。

「今は黒イチジクの季節なのでイチジク色に染めています。メロンの季節はグリーン、マンゴーの時期はオレンジ、桃はピンク、ブドウの季節はパープル……。お客様に店に入っていらして私を見てパッと、ああ、あのフルーツが始まったんだな、と思っていただきたくて。営業が夜だけだったり、髪を染めていたり、パティシエのあるべき姿とはちょっと違うかもしれません、でも、味には影響しませんし、むしろ誰もやったことのないことをやっていきたいと思っています」。
「Pâtissière MAYO」のシグネチャーデザートの一つであるショートケーキは、季節ごとに旬のフルーツが使われています。この日は、髪の色が語る通り佐賀県産の黒イチジクをセレクト。

「主人が佐賀でシェフをしていたご縁もあり、黒イチジク以外にもレモンなど佐賀の食材を選ぶことは多いですね。佐賀の黒イチジクはとにかくクオリティが高いんです。糖度はありますがベタッとした甘さでなく上品で奥行きのある味。普通のイチジクが苦手という方に、これなら食べられると言っていただいたこともあります。佐賀でこの黒イチジクを生産している農家のおじいちゃんは、地元の第一人者。黒イチジクを育てるのは難しいと言われていた土壌での栽培を成功させたお話などを伺うと、私も大切に扱わなければ、と愛情が湧きますね。方言がとても強いおじいちゃんなので、主人に通訳してもらわないとお話が通じないこともあるのですが(笑)」。

産地で、フルーツの生産者と直接会話を交わして得た情報は、デザートをつくりながらカウンター越しにお客様との話題にもなります。
「佐賀以外にもブドウは山梨や長野、メロンは千葉、イチゴは鳥取、宮城、岐阜のものを季節や用途で使い分けています。どこの誰が生産したフルーツかがわかるとお客様には安心感がありますし、スタッフも“こういう人がつくっているんだ”と知ることで、より気持ちが入り食材を大事にしてくれるようになりました」。

産地からの旅を知ることで食材もダイヤモンドもより輝く

会話の合間にも、黒イチジクのショートケーキはみるみるうちに完成、カウンター越しにゲストにサーブされます。出来立ての生クリームの軽さと優しさは“飲めるショートケーキ”と評される通り。黒イチジクとのマリアージュも完璧です。

「私がつくりたい味のフルーツを探すのではなく、農家さんが生産したフルーツの美味しさに私が合わせてデザートに仕上げるのが基本です。産地選びの基準は、自分が美味しいと思うこと。お客様が“このフルーツ美味しいから”と店に持ってきていただいたことがきっかけで取り入れたものもあります」

佐賀の黒イチジクをはじめ宮田真代さんが季節ごとのフルーツの産地にこだわり生産者との繋がりを大切にするように、サバースも良質なダイヤモンド原石が産出されるサザンアフリカ産のダイヤモンドにこだわり、鉱山での採掘から研磨、ジュエリーに仕立てられてお客様のもとに届くまでの道のりを明確にしています。

「照明を落としたこの店でも、美しいダイヤモンドは輝き方が違いますね。関西の出身ということもあり、サーバルキャットのブローチは私のキャラクターに合っている気がします(笑)。食の世界では産地や生産者をお客様にお伝えするスタイルも浸透してきていますが、ダイヤモンドもどこで生まれたものかが明確になると愛着が深まりそうですね」。

髪をカラーリングするのと同様に、お客様の前に立つ時にピアスもいくつもつけているという宮田さん。

「ピアスの一つは主人からもらったダイヤモンドです。次はイヤカフにも挑戦してみたいですね。今日はブローチでしたが、実はこのコックコートはペンダントがつけやすいように胸元のVラインにこだわってデザインしたオリジナルなので、ダイヤモンドのネックレスも良いかもしれません」。

生産者やお客様との関係を深めながら、どこにもない新しいスタイルでデザートの楽しみを提供してきた宮田さん。今、何人ものスタッフを抱え、その育成にも心を砕いています。

「人間関係に煩わされたくないから自分で、と独立したはずなのに、気づけばスタッフとの新しい関係が広がっていました。彼女たちがいつか独立する時のために休みの日に店のキッチンを提供するなど、これからも私でできることは手助けしていきたいと思っています」。

今年夏には同じ建物内にテイクアウト専門のジェラートと焼き菓子の店もオープン。宮田真代さんの挑戦はまだまだ続きます。

南アフリカの大地に生きる多様な生き物をモチーフにしたコレクションから、ダイヤモンドを咥えたサーバルキャットのしなやかな姿を表現したブローチ。耳元には希望峰にインスパイアされたイヤリングを合わせて。

ブローチ/ KRUGER〈YG×ダイヤモンド〉¥990,000

イヤリング/ GOODHOPE〈YG×ダイヤモンド〉¥858,000

 

宮田真代/MAYO MIYATA

大阪の製菓学校を卒業後、神戸「アンテノール」や東京の婚礼会社で修業の後、銀座「ラール・エ・ラ・マニエール」、新宿「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」などでパティシエ、シェフパティシエを務め、独立。2021年に完全予約制のデザート&バー「Pâtissière MAYO」をオープン。2023年ジェラートと焼き菓子のテイクアウト専門店「Pâtissière MAYO Flat」をオープン。

https://www.instagram.com/patissiere_mayo/